頭で理解し,身体で覚える!| 個人レッスン | since 2012

2013年1月の記事一覧

ピアノの場合,ピアノ教本や楽譜などを使って理論的な勉強は欠かせません。但し,いくらなんでも教本を読んでいるだけではピアノを弾けるようにはなりません。上手に弾くためには,正確な理論に則り,実際に鍵盤に向かって繰り返し練習するほかありません。

英語でも同じことが言えます。ピアノ教本を「英語参考書」に,弾けるを「使える」に,指を動かしてを「音読して」に読み替えてみてください。身体を動かしてにすればスポーツにだってあてはまりそうです。

何事も,頭でっかちはダメ,闇雲に身体を動かしているだけでもダメ,両方が相まって,「頭で理解し,身体で覚える」ことが大切なのです。

國弘先生が1970年に著した『英語の話し方』(サイマル出版会)は,当時,大ベストセラーとなって,1984年に『新版 英語の話しかた 国際英語のすすめ』(サイマル出版会)へと改訂されるまで版を重ねました。以降,たちばな出版より『國弘流 英語の話しかた』(1999)と『國弘正雄の英語の学びかた』(2006)が,それぞれ別の構成者を得て発行されています。

以下は,初版から「只管朗読のすすめ」の全文引用です。『國弘流 英語の話しかた』(1999)以降は,「只管朗読のすすめ」は「私の只管朗読」と改題し,その後半部分が構成者によって書き改められています。

國弘の最新の音読に関する知見は,『英会話・ぜったい音読 入門編』(講談社,2001)の中で,「英語習得の王道は『音読』-科学的にも証明された音読の効用」と題する項で読むことができます。

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國弘正雄『英語の話しかた』(サイマル出版会,1970,絶版)

「只管朗読のすすめ」

只管(しかん)朗読ということばは,読者の方々にとってはおそらく耳なれないことばだと思いますが,読んで字のごとくで「ひたすら朗読する」という意味です。

私がこの只管朗読ということばを思いついたのは,鎌倉期における曹洞宗の開祖,道元禅師が,「只管打坐」ということをいっていることからです。道元禅師の説いた「只管打坐」というのは「ひたすら坐りなさい」ということです。つまり道元禅においては,臨済禅などとはちがって,公案を一生懸命考えさせるようなことはあまりしません。

公案というのは,たとえば隻手の声,つまり片方の手がどういう音を出すかとか,犬の子が果たして仏性を持っているかどうかといった一種の謎解きのようなものを与え,一生懸命考えさせることによって,われわれの非常に世間的な常識のようなものを打ち破り,新しい境界にとび込んでゆくのを助けることを目的としています。

これは禅,あるいは悟りということに対する,いわばきわめて知的なアプローチだと思うのですが,それに反して道元禅師の説かれた「只管打坐」は,とにかく黙ってお坐りなさいということなのです。これが新しい境界に到達するための最短距離なのだと説かれたわけです。

伊藤が1977年に著した『英文解釈教室』は,20年後の1997年に改訂版が発行されました。巷では,「東大志望者のほぼ全員が購入するが,最後までたどり着いた者は誰もいない」と囁かれていますが,2012年5月現在,31刷まで重版されています。

以下は,手元にある初版の「はしがき」の全文です。伊藤氏の日本の英語教育に対する問題意識から,現在,いったいどれほどの成果を手にしたのでしょうか。


はしがき.JPG


伊藤和夫著『英文解釈教室』(研究社,17版,昭和59年1月20日発行)

はしがき


だれでも歩くことはできるが,歩くときの筋肉の動きを説明できる人は少ない。呼吸は生存に必須の要件であるが,そのメカニズムを解明できる人はまれである。生活に必要な活動であればあるほど,その過程は無意識の底に沈んでいる。しかしこれらの生得の活動の場合とはちがって,幼児期を過ぎてからの外国語学習では,意識の底にやがては定着し知らず知らずに働くことになる頭の動きを一度は自覚し,組織的に学習することが必要である。言語はもともと自然界の事物とはちがって,単語の意味から語法のはしばしにいたるまで,長い時間をかけて成立した社会的な約束の集積であるが,これらの約束は雑然たる集合ではなく,基本的な約束と派生的な約束,必然的な約束と偶然的な約束が集まって1つの有機体を構成している。言語が使えるとはこの有機的体系が自己の血肉となっていることであり,英語の学習とは英語の約束の体系に自己を慣らすことである。

2人の英語の神様

私の英語のバックボーンには私淑する2人の「英語の神様」がいます。ひとりは「受験英語の神様」と呼ばれた伊藤和夫先生,もうひとりは「同時通訳の神様」の異名をとった國弘正雄先生です。

伊藤和夫先生は駿台予備学校の英語科主任講師として,いわゆる教室三部作の『英文解釈教室』,『英文法教室』,『英語長文読解教室』をはじめ,『ビジュアル英文解釈』,『英語構文詳解』など数多くのベストセラー受験参考書を執筆されました。1997年にお亡くなりになられた後も,これらの著作群は色褪せることことなく現在でも書店に並んでいます。

一方,國弘正雄先生は,アポロ11号の月面着陸の同時通訳者としても有名で,文化放送「百万人の英語」で講師をされていたり,ニュースキャスターなどをつとめられ,外務省参与,参議院議員として外交舞台でも活躍されました。1970年発行の『英語の話しかた』は大ベストセラーになりました。

伊藤先生からは,英文を文頭から左から右へ,上から下へと1度読むだけで,その構造と内容を明確に把握しようとする『直読直解』の読み方を,また國弘先生からは,國弘流只管朗読(しかんろうどく),ひと通り理解した英文をひたすら音読を繰り返して頭の中に英語の回路を作るという試みを学びました。"Practice makes perfect!" が「習うより慣れよ」ではなく「習うまで慣れよ」であるということを実感させていただきました。

2人の神様が共通して語る直読直解のための方法論の,伊藤先生が「理論編」とするなら,國弘先生は「実践編」です。私はここに英語学習の王道があると信じています。そして,英語の習得をまじめに考える人たちの学び舎・実践の場としての居場所作りが,私が自分に課した使命であり,浦和英語塾の存在意義であるのです。


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